混ざった物質をどうやって分ける?
水溶液や溶解度のところでは水に混ぜること考えてきましたが、混ぜたら分けたくなるのもヒトの性・・・
今度は混ざったものをどうやって分けるのか?ということを考えていきます。混ぜるのはカンタンですが、その逆作業の「分ける」は途端と難しくなってしまうので工夫が必要となります。
まずは比較的分けやすい例を考えてみましょう。コップに水を入れて、そこに小石を数個入れたとします。水と小石を分けてくださいと言われたらカンタンですよね。手で小石を取ってしまえば、それで分けられます。
ところが、コップの水に細かい砂を入れたとしましょう。水と砂を分けてくださいと言われたらどうでしょうか?砂は細かすぎるので手で取るには限界がありそうです。
こういう場合は分けたいもの同士の違いに注目します。水と砂の違いはいろいろありますが、そのひとつとして「細かさ」が挙げられるのではないでしょうか。砂がいくら細かいといっても、水と比べればひとつひとつの粒は格段に大きいといえます。 つまり、水だけ通るくらいの穴が空いたものに砂水を通せば、水だけ下に落ち、砂は残りそうですよね。
このアイデアが「ろ過(ろか)」という分け方です。
「ろ過」を知る
ろ過はまず「ろうと」に折った「ろ紙」を入れます。ろうとから液が漏れないようにするため、ろ紙はろうとからはみ出さないように入れます。そして、ろ紙がろうとに密着するよう蒸留水(余計なものが混じっていない純粋な水)でぬらします。そのろうとをろうと台に載せて、ろうとの下にビーカーを置きます。このとき、ろうとのあしがビーカー内側の壁面にくっつくように置きます。こされた液(ろ液)を流れやすくするためです。
この準備ができたらいよいよ液をろうとへ流します。液をガラス棒につたわせながら、ろうとへ流していくのですが、ガラス棒を使わずに流し込むと勢いよくろうとに液が入ってしまうおそれがある理由からこのように流していきます。
ろ液はろ紙を通ることで、粒の大きい固体がろ紙に残り、液体の方はろ紙を素通りしてビーカーにたまることで、分けられるのです。

再結晶で分ける
今度は食塩と中にある不純物を分けることを考えてみます。天然の食塩は塩以外にもにがりなど様々なものが混じっていて、それが食塩の美味しさになるのですが、純粋に塩だけを取り出したい場合にはやはり分ける必要があります。
このとき「再結晶(さいけっしょう)」という方法で純度の高い食塩を得ることができます。
そこで、再結晶の説明の前にまず結晶について説明します。結晶は、規則正しい形をした固体のことを表し、物質によって固有のいろいろな形があります。
再結晶では純度の高い結晶を取り出すのですが、それには不純物の混じったものをいったん水に溶かし、再び水を蒸発させたりして、結晶を取り出します。この作業をすること水に溶かす前より純度の高い結晶を取り出せるのです。
今回の食塩の例でも、食塩をいったん水に溶かし、水を蒸発させると残るのは純度の高い食塩の結晶となります。これで塩と塩に含まれる不純物など分けられます。
蒸留で分ける
さいごに分ける例として、水とエタノールを分けることを考えてみましょう。なお、エタノールとはアルコールの一種で、お酒にも含まれている物質です。この場合、水もエタノールも液体なので、ろ過や再結晶などの方法では分けることはできません。
そこで、「蒸留(じょうりゅう)」という方法を使います。蒸留とは、分けたい物質同士の「沸点(ふってん)」の違いを利用して分けます。水の沸点は100℃、エタノールの沸点は約78℃なので、80℃くらいに温度を保つと、主にエタノールだけが蒸発して、水はほぼ液体のまま残ります。よって、水とエタノールが分けられるというからくりです。

実際には上図のように、水とエタノールの混合液を枝付きフラスコに入れて熱します。蒸気を80℃くらいに保ちながら熱すると、水より先に沸点に達したエタノールのみが蒸気として枝を通り、水に使った試験管へ移動します。蒸気はビーカーの中の水で冷やされ、再び液体となって試験管にたまります。
一方、枝付きフラスコ内の液体はエタノールが蒸発してしまっているので、残った液体が水ということになります。こうして、水とエタノールを分離できるのです。
分け方については以上で理解できたかと思いますが、蒸留の際に気をつけていただきたい2点を最後に説明します。
まずは突沸防止のために沸騰石を入れることです。突沸という現象は、沸騰のとき生じる泡がとても大きくなり、その泡によって、液体が飛び散ることをいいます。熱い液体が飛び散るのは非常に危険なので、そのような大きな泡ができないよう沸騰石を入れます。
料理のときに鍋で沸騰させたとき、そんな大きな泡はできないよ、と思ったかもしれませんが、実はガラスのようなツルツルのもので沸騰させると一般的に大きな泡がひとつできるんですね。
そしてもうひとつ。細かい点ですが大切なことで、試験管にたまるエタノールにガラス管がつからないようにすることが大切となります。これはたまったエタノールがガラス管へ逆流しないようにするための配慮です。
仮にガラス管がエタノールにつかっていたとしましょう。水とエタノールを十分分離できたので、ガスバーナーの火を止めます。すると、枝付きフラスコ内が冷え、気圧が下がります。今まで外気と気圧がつりあっていたものが、フラスコ内の気圧が下がることで外気の気圧のほうが強くなり、試験管のエタノールを外気が押して逆流してしまう・・・とこんな流れで逆流が起こります。
ガラス管をエタノールにつからないようにしましょうね。