状態変化と温度

物質が温度によって状態変化することを「物質の状態」で学びましたが、ここでは状態変化と温度の関係をもう少し詳しくみていきます。今回も水を例にとって考えていきます。

実験として、氷を熱して温度と状態がどう変化するかを調べます。この結果を横軸が時間、縦軸が温度のグラフで表すとグラフはどのようになるでしょうか?

状態変化と温度

ふつうに考えると、時間がたつと温度も段々上がってくる下のようなグラフになるんじゃないか?ってイメージすると思います。

ふつうのイメージ

ところが実際に実験して、グラフを描いてみると上のグラフとはちょっと違ったグラフになります。

もちろん時間がたつにつれて、温度も上がっていきますが、ポイントは「状態変化しているときは温度は変わらない」ということです。なので、グラフを描くと下図のようになります。

氷から水に変わるまでの時間、および水から水蒸気に変わるまでの時間は温度が変わらず、グラフとしては横ばいとなります。なぜこのようになるのでしょうか?

なぜなら、状態変化するときは変化するためのエネルギーを使うからです。熱せられることで水にエネルギーが与えられていますが、状態が変わらないときはそのエネルギーは温度上昇に使われる一方で、状態が変化するときはそのエネルギーを変化するために使うので、氷と水、または水と水蒸気がともにあるとき(すなわち状態変化の最中)は温度が全く変化しません。そして、状態変化が完全に終わるとまた温度は上がりはじめます。

状態変化と温度のグラフ

このグラフの形は水だけでなく、他の物質も熱すると同じになります。物質ごとの沸点、融点はそれぞれ特有なので、沸点・融点の温度が同じグラフは、同じ物質を熱したときのグラフと判断できます。

さらに、固体から液体に変化するときの時間よりも、液体から気体に変化するときの時間の方が長くなります。これは、同じ量でも固体から液体にするのに使うエネルギーより液体から気体にするのに使うエネルギーの方が多いためです。カチッとしたところ(固体)からブヨブヨ(液体)させるのはちょっと動かせばよいですが、ブヨブヨ(液体)から水分子ひとつひとつをバンバン飛ばす(気体)のは相当エネルギーを使いそうだな、というイメージで理解すればよいと思います。

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応用:混合物についての状態変化と温度のグラフ

前に紹介した水を熱する実験を、今度は水とエタノール(アルコールの一種)を混ぜた混合物で実験したときを考えます。水もエタノールもふつうの気温(20℃くらいとする)では状態は液体で、どちらも透明なので見た目の区別はつきにくいです。

この混合物を熱したときのグラフは下図のようになります。

水とエタノールの混合物の場合

まず復習として、水の沸点は100℃、エタノールの沸点は約80℃であることを確認しておきます。1では80℃未満なので、水もエタノールも液体です。熱しているので温度はどんどん上昇します。そして、約80℃になったとき、エタノールが蒸発し出して気体になります。このときエタノールが全て気体になるまで、エタノールの温度は上がりませんが、水はまだ液体のままなので、水だけは温度上昇します。これが2のときで、水だけ温度上昇しているので、温度の上がり具合(グラフの傾き)はゆるやかになります。

3ではエタノールが全て気体になっているので、液体である水と気体であるエタノールが温度上昇していきます。そして、100℃になると、今度は水が蒸発し始めます。2のときと同様に水は温度上昇しませんが、気体のエタノールは温度が上がっていくので、結局グラフはゆるやかに右肩上がりとなります。これが4のときです。

最後に水が全て気体になって、水とエタノールともに気体のときが5です。また気体の水とエタノール両方の温度が上がっていくことになります。

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